イタリア合気会本部道場
1.道場までの道のり
イタリア旅行の締めくくりとしてローマにあるイタリア合気会の本部道場(SCUOLA CENTRALE)をアポなし訪問する事にしました。イタリア合気会はイタリア全土に150近い傘下道場を擁していますが、その中心にあるのがローマの本部道場です。
イタリア合気会のホームページで本部道場の場所を調べると、住所がVia Bari, 20であることが分かります。しかし、通りの名前だけではそれがローマのどこにあるのかさっぱりわかりません。イタリアの住所は日本のように○○市○○町○丁目○番○号のように大から小を示す構造になっておらず、建物の前の通り名しか示されないので、それが町のどこにあるのかさっぱり見当がつかないのです。
そこでホームページに掲載されている道場の地図(右の地図)と手元にあるローマ市内の観光地図を見比べてみました。しかし、道場の地図には、観光地図に載っている有名な通りや建物が一つもありません。おそらくこれは郊外の地図なのだと思いました。
そこで地図上の赤いMマークが地下鉄の駅をあらわしていると仮定し、地図は上が北向きであるだろうと推測して、青い円で示されている道場の場所は南西から北東に走る地下鉄の線上にあるのではないかとめぼしをつけました。現在ローマには地下鉄がA線とB線の2本しかなく、南西から北東に走っているのはB線だけなので、B線上をくまなく調べる事にしました。
すると、駅周辺の道路の形から地図左下の赤いマークは、ローマの中心にあるテルミニ駅から2駅目のポリクリニコ駅を示している事が判明しました。この駅は、ローマの北東、古代ローマ皇帝アウレリウスが建設した城壁の外にある大学都市のすぐ側にあります。
2.イタリア合気会本部道場のようす
本部道場と言えば、ほとんどの人が東京にある合気会の本部道場を思い浮かべるでしょう。大阪合気会で稽古している人は吹田の本部道場を思い浮かべるかもしれません。いずれにしろ私達がイメージする本部道場は合気道専用の稽古場です。
イタリア合気会本部道場のホームページには月曜日から土曜日まで毎日練習をやっているとあったので、私はここも合気道専用道場だろうと勝手に想像していました。ところが、実際に行ってみると合気道専用道場ではなくボローニャやナポリの道場と同じようにビルの地下にあるスポーツ施設でした。
今回、道場には火曜日と水曜日の2回訪問しました。両日とも稽古開始の30分ほど前に着いたのですが、いずれの日も先生はまだ道場に来ていませんでした。幸い英語や日本語が話せる生徒がいたので練習に参加したので先生から許可をもらいたいと言うと、先生はいつも稽古開始直前に道場に来るので先に道着に着替えておけば良いと言われました。結局、二日とも道着に着替えてから先生の許可をもらう事になってしまいました。
火曜日のクラス(20時から21時45分)を指導されたのはAlberto Anzellotti先生(五段)。アルベルト先生は日本で稽古をした事があり、日本から来た私を歓迎してくれて、幾らでも写真を撮ってよいといってくれました。水曜日のクラス(20時半から21時45分)を指導されたのはAntonio Salvati先生(四段)でした。アントニオ先生は厳しい雰囲気の先生で、最初写真を撮る事に難色を示されました。少しなら写真を撮ってもよいと稽古の最中に言われましたが、結局二日目は写真を余り撮りませんでした。そこで、初日(火曜日)の稽古の様子を紹介します。
道場では稽古開始直前までレスリングの練習が行われていました。床は青いレスリングマットです。このまま稽古をするのだろうかと様子を見ていると、生徒がレスリングマットの上にうす緑の帆布をさっと敷き、端をロープで縛り上げて合気道用に変えていました。帆布と壁が全く同じ色だったので、道場の中はうす緑色一色になりました。
アルベルト先生は姿勢が低くパワフルな技をされていました。ボローニャのロベルト先生やナポリのリノ先生と同系統だという印象をもちました。持たれた腕を使って相手を少し引き回す感じで技をかけるため、白帯が受けを取ると先生の動きについていけず手が切れてしまう場面があり、これも先の二人の先生と同じようだと感じました。
この日は入り身転換、小手返し(コバ返し)、二教押さえ、回転投げの変形など片手取りから始まる技を稽古しました。
片手取り小手返し(コバ返し)では、袴をはいたツルツル頭の背の高い人と組みました。大きく歩幅を取って長い腕で思いっきり投げ飛ばそうとするので、逆らわずに受けをとると2~3メートルぐらいぶっ飛んでしまいました。毎回思いっきり技をかけてくるので受けるだけで疲れてしまいました。
片手取りからの回転投げの変形技は、まず回転投げに入り、回転投げに投げる直前の持ち上げた腕に、頭を抑えていた腕を手前側から引っ掛けて、体を頭の反対側へ転換して、腰を落として締め上げるという技です。一見複雑な技に見えますが、回転投げの基本が出来ていればかける方はそれほど難しい技ではありません。受けは辛い姿勢に締め上げられます。道場全体でこの技を稽古している様子は、創作ダンスをしているように見えました。
この技の時、私は白帯の兄ちゃんと組む事になりました。この人は技をかけるときにすごく力んで顔をしかめるクセがあり、東大寺南大門の仁王さんにそっくりでした。私はニコニコしながら技をかけ、顔の力を抜いても技がかけられることを教えてあげたのですが、彼はどうしても顔をしかめてしまうと言います。私達二人のやり取を見て見学に来ている人たちが笑っていました。