My jouney of aikido

クアラルンプール Kuala Lumpur

YMCA合気道クラブ

1.道場までの道のり

さて、今回はマレーシアの首都、クアラルンプール(KL)の道場です。
ネットで調べたところ、KLにはあまり道場ないようでしたが、その中からKLセントラル駅の前にあるをクアラルンプールYMCA合気道クラブを選択しました。KLセントラル駅はKCATという施設のある大きな駅でJR難波駅のような所です。YMCAはほとんどの地図に載っている有名な施設ということもあり、場所を特定するのはとても簡単でした。
YMCA合気道クラブはKLで存続している最も古い道場で、毎年たくさんの先生を招待してセミナーを行っている活発な道場で、神戸のせいぶ館道場と交流を行っているそうです。
今回はいままでと違い訪問先の先生にメールを事前に送ることにしました。いきなり道場を訪問するのもちょっとした度胸試しとして楽しいのですが、限られた滞在期間で確実に道場を訪問し稽古に参加するには、事前連絡をしておくのが無難です。
たとえホームページに練習のスケジュールが載っていたとしても気をつけなれければいけません。練習の曜日や時間の変更といった重要な情報が更新されていなかったり、ひどい場合にはホームページは存在するが既に道場は閉鎖されているということもあるのです。
先生からはすぐに歓迎の返答がありました。YMCA合気道クラブでは月曜日から金曜日まで毎日午後7:30から9:00まで練習があり、火曜日は初心者クラス、金曜日は子供クラスになっています。また日曜日は早朝7:30から9:00まで練習があります。私は水曜日の一般クラスに参加することにしました。

2.YMCA合気道クラブのようす

道場はYMCA敷地の隅、バスケットボールコートの奥にありました。小屋のような木造の建物で窓にはガラスがなく金網になっています。練習時間開始30分前に訪れたのですが、既に数人の生徒に対して先生が素振りと組太刀の指導を行っていました。
道場の入り口は土間になっていて、見学や練習待ちの人が座れるようになっています。道場の正面には、植芝盛平先生、加納治五郎先生、そして摩文仁賢和先生の写真と、「合気道」「糸東流 空手道 君子之拳」の二枚の額が飾ってありました。道場の後ろには大きな鏡、壁にはこの道場のインフォメーションが貼ってあります。
 先生はこちらをちらりと見ることもなく、「ダメダメ、そんなんじゃないっ」「一振り一振りきっちりとやらなきゃイカンッ」と、厳しい声で指導されています。素振りの様子から基本に忠実な指導をしていることが一目で分かりました。
私もアメリカの道場にいた時に五月女先生系列の道場で組太刀を学びましたが、今ではすっかり忘れてしまっているので、もし今日の練習が組太刀だったらちょっと恥をかくかもしれないなぁと少し心配になりました。
剣の練習が終わったようなので先生に自己紹介をすると、強面が一変、とても紳士的な笑顔で迎えてくれました。先生は Raymond Kwok氏。この道場の道場長です。
 練習開始の時間には約20名の生徒が集まっていました。若い人が多く、袴をはいている人は4名だけでした。
ほとんどが華人で、インド系の人が二人、白人が一人でした。なぜかマレー人はいないようです。マレーシアはマレー人、華人、インド人の三つの民族を中心とする他民族国家ですが、必要に応じて社会の中で上手くすみわけをしています。例えばマレー人はほとんどがムスリムであるため、ハラーム(宗教上食べられない食事、例えば豚肉料理)を出す中華系のレストランでは見かけることがありません。
合気道の道場にマレー人がいない正確な理由はわかりませんが、おそらく偶像崇拝を厳しく禁じているイスラム教のためだと思われます。というのもこの道場の前には植芝盛平先生の写真が加納治五郎先生と摩文仁賢和先生の写真と並んで飾ってあり、練習が始まるときに正面に礼をしていたからです。
またムスリムの女性は髪の毛をスカーフで隠さなければならないので、合気道の練習はできないでしょう。もしかしたらマレー人の生徒はいるのかもしれませんが、訪問したときがちょうどラマダン(断食の月)にあたるため運動を避けていたのかもしれません。

練習は全員の準備体操から始まりました。全員が先生の号令に合わせて丹念に準備体操をしています。
アメリカの道場でも同じようなところがありました。住吉道場では稽古開始前に各自準備体操をすることになっているので、ちょっと時間がもったいないような気がしました。準備体操の次は前回り受身、後ろ受身、そして膝行です。膝行は前進、後退、転換の三種類をやりました。
 ここで全員に対して私が練習に参加していることが先生から告げられました。「楽しい思い出ができるように皆さんできるだけ手を合わせて下さい。」と言って下さいました。続いて今日の練習内容の説明がありました。次週に昇級審査があるので、今日は上級者と初級者に別れて試験に出る基本技を行うそうです。
 私は上級者のグループに入りました。袴をはいている人から茶色帯の人まで順番に休みなく入れ替わり立ち代り私と組んで練習してくれました。
技は、片手取りの入身投げ、片手取りの一教、座法片手取りの小手返し及び俗に木葉返しと呼ばれる小手返し、座法片手取り四方投げ、後ろ取りの三教、突き小手返しなどです。全て教本に載っている基本通りのやり方で、みな丁寧に稽古をしていることが印象的でした。私がちゃめっけを出して、住吉道場でよくやる手のひらを上に向けて掛ける四方投げや六方の捌きから小手返しを掛けると少し驚いていました。

午後に夕立があったせいもあり、気温・湿度とも高く、道場の中は蒸し風呂、まるで日本の真夏のようです。私の道着は分厚い柔道着だったために大変な汗をかきました。東南アジアに来る時は薄い道着を持っていかなければいけないと反省です。
他の人も疲れたようで、各自休みを取っていました。先生も「私もちょっとしんどい」と片言の日本語で笑っていました。残念ながら先生は試験を受ける人たちの指導で忙しく、手を合わせる機会はなかったのですが、私はいろいろな人とぶっ続けで練習ができ楽しい時間をすごすことができました。
 

稽古は座法呼吸鍛錬法でおしまい。
 

道場の皆さんと記念撮影。
 

旅行で合気道をしたときに一番困るのが汗でぬれた道着。海外ではコインランドリーはなかなか見つからないし、旅の途中でのんびり洗濯している時間もないので、なんとか自分で乾かさなければいけません。ところがホテルの部屋は気密性が高いためか放っておくとすぐにかび臭くなってしまいます。
ドライヤーで乾かしてみたり、クーラーの風があたるところに置いたり一苦労です。
やっぱり薄い道着が必要ですね。